6.1          はじめに
6.2          IBOCとの契約登録及び料金の支払い
6.3          専門領域の選択
6.4          契約の延長
6.5          契約の取り消し
6.6          スーパーバイザーの変更
6.7          専門領域の変更
6.8          CTA・TSTAトレーニング契約のスーパーバイザーの例外扱い
6.9          CTA・TSTAのトレーニング契約におけるスーパーバイザーの拡大扱い
6.10        書式

6 IBOCトレーニング契約

6.1 はじめに

トレーニングのある時点で、TAを学ぶ人は、IBOC及びスーパーバイザーと、公式の契約を結ぶことになる。それはトレイニーにとっては資格取得の行程を進むべく取り組むこと、またスーパーバイザーにとってはトレイニーをサポートして、望ましい発達を遂げる責任を分かち合うことを宣言することである。トレイニーとスーパーバイザーが追う公式の責任は,「合意」という用語を使って区別され,契約書類の中に概略が述べられる。一貫性を保つために,これらの合意は,このハンドブックでは“契約”と呼ぶすることにする。IBOCの事務局はTAのトレイナーと研修施設に関する詳細な情報を提供することができる。一人の人が複数の契約を結ぶこと、異なる分野で異なるスーパーバイザーと契約することも可能である。

6.2  IBOCとの契約登録及び料金の支払い

契約書の登録はIBOCとの間でなされる。契約書をIBOCに送付し、承認を受けるには、毎回以下の点がチェックされる必要がある。

  1. トレイニーとスーパーバイザーの双方がITAA会員として会費を納入済みであること。
  2. 契約書には、トレイニーおよびスーパーバイザー(さらにスーパーバイザーがPTSTAならばTSTAも)によって日付と署名が記載済みであること。
  3. 書式の重要事項がすべて記載されていること。
  4. 書式は英語で記載されていること。
  5. 契約の登録に際して、費用を納入すること。

CTA契約は、口頭試験期日の少なくとも18か月前には登録されていなければならない。

6.3 専門領域の選択

トレイニーとスーパーバイザーが契約書にサインする際には、専門領域を選択し特定する必要がある。カウンセリング、教育、組織とサイコセラピーの4領域がある。専門領域は、通常トレイニーが専門家としての実践の大半を行っている領域が選択される。トレイニーの実践が他の専門領域にも及ぶのであれば、トレイニーとスーパーバイザーは、トレイニーがその領域の資格を持つ別のトレイナーからスーパービジョンを得ることに同意するのが一般的である。

注意:サイコセラピストとして働くには,国によって法規制が敷かれている点に注意されたい。この領域選択の際には、トレイニーはスーパーバイザーとそれについて話し合うことが重要である。

スーパーバイザーは、トレーニング開始にあたり、自分の専門領域(複数のこともある)や契約書登録の手続きについて責任を持って候補者に知らせなくてはならない。通常スーパーバイザーは、自分の専門領域でのみ契約を結ぶ。もし、スーパーバイザーが、資格を持っていない専門領域で契約を結ぼうとするのなら、契約の例外扱い(6.8)や拡大扱い(6.9)を求めてIBOCに申請する必要がある。

6.4 契約の延長

1回のCTAトレーニング契約期間は5年、TSTAトレーニング契約は7年である。トレイニーがこの各年限を超えてトレーニングを続けたい場合、最初の契約と同じ手続きに従い、新たな契約書にサインすることによって契約関係を継続する必要がある。契約の費用は、再度納入しなくてはならない。二度目の契約期間も、最初と同じである。形式上、この第二の契約は新たな契約であり、トレイニーは自分のスーパーバイザーを変えてもよいし、もとのスーパーバイザーとの契約細目について再度交渉することもできる。TSTAの契約の更新は,期限が切れるタイミングで1回のみできる。期限を過ぎた場合,トレイナーがもう一度TEW(トレーニング承認ワークショップ)を行う必要があるが,前回参加時から(トレイニーの資質や課題が)大きく変わらない場合,別のTEWに改めて参加させる必要まではない。最初のTSTA契約が期限切れとなれば、PTSTAはCTAの地位にもどる。いかなる理由にせよPTSTAがPTSTAであることをやめれば、その人が(トレイナーとして)結んでいる契約は,いずれも自動的にTSTAの契約保持者にゆだねられ、そのTSTAが契約に対する責任を負う。

例外的な事情があるときには、IBOCへの申請により契約が延長されることはありうる。

6.5 契約の取り消し

トレイニーかスーパーバイザーのいずれかが継続中の契約を取り消したい場合、まず契約相手との間で合意を得て、契約書をIBOC事務局に返上しなくてはならない。契約書返却に際しては,二者のいずれかが(できれば双方が)取り消した日を明記して署名をしなければならない。

6.6 スーパーバイザーの変更

契約期間中にトレイニーがスーパーバイザーの変更を希望する場合、次の手順を踏むこと。

  1. 通常,トレイニーは現在のスーパーバイザー、およびこれからのスーパーバイザーとの間で変更の合意を得る。
  2. 三者全員が、「スーパーバイザー変更」の書式(12.6.3)に記入し、署名し,IBOC事務所へ送付する。オリジナルの契約書のほか,必要に応じて例外扱い,拡大扱いに関する書類も同送する。
  3. IBOCはスーパーバイザー変更を登録し、記入済みの書式のコピーに日付を押印して各々に返送する。

トレイニーとスーパーバイザーはどちらも、望むならスーパービジョンの合意事項を自由に変更することができる。いずれの者も偏見を持つことなく、プロセス全体が、「私はOK、あなたはOK」の立場から行われるべきである。

6.7 専門領域の変更

  1. CTA契約の場合、前の契約を取り消し、単に新たな分野での新規の契約を通常の方法で結ぶだけで専門領域を変更できる。
  2. 既にCTAやPTSTAである者は、新たな分野において自国の要件に適合しており,かつその分野における力を有していると示せば,CTA口頭試験の合格をもって分野を変更することができる。
  3. TSTAは、新たな分野でのTSTA試験を受けるか、分野拡大の手続き(後述の6.9)に従うことによって、専門領域を変更してよい。
  4. 領域の追加:2領域でCTAとなっている者が,いずれの領域においてもTSTA契約を結ぼうとする時,TEWは一度だけ参加すればよい。

6.8 CTA・TSTAトレーニング契約のスーパーバイザーの例外扱い

6.8.1 はじめに

トレイニーとTSTAまたはPTSTAは、何らかの理由で、スーパーバイザーが資格を持っていない専門領域でトレーニング契約を結びたいと望むことがあるかもしれない。この場合、スーパーバイザーは,「例外扱い」を申請できる。

6.8.2 定義

  1.  例外扱いとは、PTSTAやTSTAが、資格を持っていない専門領域でトレーニング契約を結ぶときに与えられる特別な許可のことである。
  2.   例外扱いは、一つの契約ごとに、スーパーバイザーに与えられる。
  3.  それは、資格を持たない専門領域全般にわたり契約を結ぶ権利を与えるものではない。
  4.  トレイニーとスーパーバイザーが相応の理由を提示でき、条件にかなった場合に例外扱いが認められる。

6.8.3 例外扱いの申請

  1. スーパーバイザーとトレイニーは、例外扱いに関して同時に申請しなければならない。
    • トレイニーはなぜそのスーパーバイザーを選んで契約を希望するのか、相応の理由を提示しなければならない。通常は、選択した分野において,自分の住む地域に適任のトレイナーがいないという理由になるだろう。
    • 通常は、トレイニーの専門領域で資格を持つTSTAかPTSTAから,その契約が承認されなければならない。
  2. スーパーバイザーは、自分の専門家としての能力、仕事上の資格、候補者が資格取得を望む専門領域での実務経験について根拠を提示して、例外扱いを申請する。そのスーパーバイザーが既に当該分野で例外扱いを得ているという証拠を提出できれば、このトレイナーの資質の証明は必要とされない。また、その分野で何例の例外が現在有効となっているかも示さなくてはならない。
  3. スーパーバイザーは、トレーニング計画を提出し、それがトレーニング契約の一部をなす。このトレーニング計画の中で、スーパーバイザーは以下のことをしなければならない。
    • 共同スーパーバイザーとなる候補者の名前をあげる。
    • トレーニング契約がCTAのものか、TSTAのものかを明記する。
    • トレーニング計画のどの部分にだれが責任を持つかを述べる。
    • IBOCのトレーニング規準を満たせることを示す。
  4. 共同スーパーバイザーは、以下を満たさなければならない。
    • トレイニーの専門領域でティーチングとスーパービジョンの資格を持ち、当該分野で認定されていること、すなわち,その分野において信用されて(資格を有して)いるか,あるいは以前に拡大扱いの認定をなされたことがある(6.8参照)。
    • トレーニングの過程でスーパーバイザーと協力することに書面で同意していること。
    • 契約によるトレーニングの30%以上に関与すること。
    • CTAの契約の場合、PTSTAかTSTAであること。
    • TSTAの契約の場合、TSTAであること。

共同スーパーバイザーになれる有資格者がいない場合、そのスーパーバイザーが共同スーパーバイザーとの協力の要件を満たさなくても、IBOCは例外を認めることがある。この場合には、スーパーバイザーが,選択された分野のTSTAから,どうスーパービジョンやガイダンスを得るつもりか、述べなくてはならない。

例外扱いの要請は、書面(例外扱い用のチェックリスト用紙を含む。12.6.4を参照)と一緒に,IBOCの「例外・拡大扱い管理担当者」に送付されなければならない。この管理担当者がIBOCの代理となって,契約の例外扱いないしは拡大扱いを担当する(付録1,IBOCニューズレター及びウェブサイト参照)。

6.8.4 例外扱いの承認または不承認

例外・拡大扱い管理担当者が上に述べた書類を受け取ると、事務局担当者がこれを精査し、必要ならIBOCの他のメンバー、例外扱いが求められている分野のTSTA,経験豊かなPTSTAに、申請の評価にあたって助力を求める。もし例外が認められない場合は、管理担当者は,申請者にフィードバックとして不承認の理由を述べ、再度申請する場合、申請者が何を満たす必要があるかを示すことになる。

6.8.5 例外扱いが認められる場合

  1. 例外扱いの申請が認められる場合、この有効性に関する通知を、スーパーバイザーがIBOCから受け取る。
  2. スーパーバイザーとトレイニーは、例外扱い承認通知をコピーして同封し,通常の契約登録の手続きを行う。

6.8.6 例外扱いが承認されない場合

例外扱いの申請が承認されない場合、申請者は、IBOC委員長に異議申し立てができる。申請者は、異議申し立ての根拠を書面で述べなければならない。IBOCの委員長は、次の会合で委員と協議する。委員会の結論が最終決定となる。

6.8.7 その後の例外扱い

同じ分野でさらに例外扱いを申請するトレイナーは、資質を有する証明を送付する必要はない。一つの分野でのCTAトレーニング契約では、スーパーバイザーが通常有することのできる例外は、同時に3例までである。

6.9 CTA・TSTAのトレーニング契約におけるスーパーバイザーの拡大扱い

6.9.1 はじめに

TSTAとPTSTAの中には、資格を有する分野とは異なる分野で専門的な職歴や経験があるという理由から、訓練の範囲を広げてトレーニング契約を結びたい人もいるであろう。拡大扱いの手続きは,経験豊かなスーパーバイザーが、CTAとTEWの全行程の手続きを(行うことも選択肢ではあるが)一通りやり直さなくても済むようにするため、整備されたものである。PTSTAは、PTSTAとしての承認から2年経過すれば、拡大扱いを申請してよい。

6.9.2. 定義

  1. 拡大扱いとは、TSTAまたはPTSTAが、自分の専門領域とは異なる種別において、教え、スーパーバイズした時間を正規のものとして証明し、トレーニング契約を結ぶことを可能にする,包括的な許可である。
  2.  TSTAに認められる拡大扱いとは、そのTSTAが自分の専門とは異なる分野でCTA及びTSTAのトレーニング契約を結ぶことへの許可である。
  3. PTSTAに認められる拡大扱いとは、そのPTSTAが自分の専門領域とは異なる分野のCTAトレーニング契約を結ぶことへの許可である。
  4. PTSTAが拡大扱いを申請する場合、PTSTAのスーパーバイザーは、以下の条件を満たさなければならない。

a. PTSTAが申請している専門領域で資格を持っていること。

さもなくば,

b. PTSTAが申請している専門領域での拡大扱いを認められていること。

あるいは、

c. 通常あまりない状況ではあるが、PTSTAが申請している専門領域において、資格保持者であるか、拡大扱いにより資格を認定済みのしかるべきTSTAを指名し、そのTSTAと協力してこれからのトレーニングに共同で責任を持つこと。

6.9.3 拡大扱いの申請

拡大扱いを申請する人は、拡大を求める専門領域において実際に実務を行っているTransactional Analyst、スーパーバイザー,そして教師としての専門的な資質を示すことが必要である。

申請者は、以下のものを提出しなければならない。

  1. 拡大扱いの申請理由を述べた申請書。
  2. CTA筆記試験のA・B部分と同様で、拡大を求める専門領域に言及している文書。匿名とし、2つの部分から成る。

    パート1:拡大する専門領域でのTransactional Analystという専門家としての自己像。以下の内容を含むこと。

    1)申請者が拡大扱いを要請する分野でどのように仕事をしているか、例を含めた説明。

    2)申請者のトレーニングの哲学の記述。

    3)この分野での仕事をどのようにしているか、自分の専門領域と同じ面、異なる面の両方について論じること。

    パート2:候補者の、トレイナー、スーパーバイザー(いずれか、または両方)としての専門的な経験の記述。たとえば、個人としての体験や、行おうとしているワークショップや講義の詳細、トレイニーに対するスーパービジョンやスーパービジョンの計画の詳細を含むこと。これは、拡大扱いを申請したい分野で,少なくとも二人のトレイニーのトレーニングに関与していることを示す詳細な記述を含むべきである

  3. 拡大扱いを要請する専門領域で資格を有するTSTAから支持する内容の手紙一通。もし、TSTAからは無理であれば、適切なPTSTAからの支持の手紙でも受理される。
  4. TSTAの資格証またはTSTA契約のコピー。
  5. 「例外扱い」規定によって契約を結んだトレイニーがその領域で得たCTA資格証2名分のコピー。あるいは、新たな領域での自身の口頭試験合格証のコピー(言いかえれば、申請者は、CTA試験の口頭試験部分の受験を自分の資質の証左として選択してもよい)。拡大扱いの書式のチェックリストについては,12.6.5参照。

拡大扱いの申請は、必要書類を添えて、しかるべきIBOCのメンバーに送付されなければならない。委員会の代表となるメンバーが,IBOCの代理となって,拡大扱いの契約を取り扱う(IBOCニューズレター、ウェブサイト参照)。

6.9.4 拡大扱いの承認と不承認

IBOCが上記の書類を受け取ると、拡大扱いが申請されている専門領域にいるTSTAまたは経験豊かなPTSTAが1名指名され,書類に目を通す判定者なる。

  • 判定者は、書類の受理が妥当か否かの判断について,意見を述べるよう依頼される。
  • 判定者が書類を受理妥当と判断するならば、IBOCは拡大扱いを認める。
  • 判定者が書類を受理不相当とみなす場合、IBOCは,拡大扱いが申請されている専門領域のTSTA一名か経験豊富なPTSTA一名に相談し、同様に判定するよう依頼する。
  • もしも第二の判定者が、書類を受理するならば、最初の判定者とその事例について協議し、共同の結論に達するよう依頼される。受理可能との結論になれば、IBOCは拡大扱いを承認する。
  • 第二の判定者が書類を受理しないとなった場合、IBOCは拡大扱いを承認しない。
  • もし見解が一致に達しないときには、3人目のTSTAが呼ばれ、これについてIBOC会議で協議される。
  • 拡大扱いが認められない場合、判定者は申請者に、フィードバックとして不承認の理由を述べ、申請者が再申請する場合、何を満たす必要があるかを示す。

6.9.5 拡大扱いが認められる場合

6.9.3で説明した条件が満たされ、書類が受理されると、IBOCは拡大扱いを認めることとなる。これについてIBOC事務局には通知がなされ、申請者は、拡大扱いの書類を受け取る。承認された承認者は、新たな分野でTSTAまたはPTSTAを名乗ることができる。もしPTSTAがTSTA試験に合格すれば、拡大扱いは自動的にTSTAのレベルでも認められる。

6.9.6 拡大扱いが不承認の場合

拡大扱いが承認されない場合、申請者は、IBOCの委員長に異議申し立てができる。申請者は、申し立ての根拠を書面で述べなければならない。IBOCの委員長は、委員会で協議し、委員会の結論が最終決定となる。

6.9.7 手続きのバリエーション

IBOC委員長と委員会は、基本手続き以外に,特例の措置を講じることができる。例外および拡大扱いを担当する人物の氏名・住所は,IBOCから得ることができる。

6.10 書式

CTAトレーニング契約(12.6.1)

TSTAのトレーニング契約(12.6.2)

スーパーバイザーの変更(12.6.3)

例外扱い申請書類のチェックリスト(12.6.4)

拡大扱い申請書類のチェックリスト(12.6.5)